萌え ゲームのこんな要素

「将来への不安」を取り除くのに必要とされる財政再建や不良債権処理は、時期を間違えればそれだけで充分に景気をぶち壊す破壊力を持っている。 そして本当に景気が悪化したら、一九二九〜三三年の米国で見られたように、人々はますます慎重になり、貯蓄を増やそうとするだろう。
そうなると景気はそれこそ雪だるま式に悪化しかねないのである。 また、将来に不安を感じている人たちが心配しているのは、実は財政赤字などではなく、自分たちが勤めている会社がバランスシート修復を進める過程で、どのようなリストラを自分たちに強いてくるかであろう。
そうであるなら彼らの不安を払拭し、実際に景気を良くするには、企業のバランスシート修復を応援し、彼らが早く前向きの行動をとれるようにしなければならないのである。 ただ財政に関しての実際のK政権は、発足当初のスローガンに比べ、最近はかなり現実的な方向へ動いている。
T氏は「今すぐ財政再建に取り組むのは現実的ではない」と言い出しているし、K首相自身も「何かパニック状態、緊急事態が起きれば柔軟に考えなければならない」と、三○兆円の新規国債発行限度はあくまで目標であるという認識を示している。 K首相のこの発言はもっともなことであり、経済は生き物だから、事前にいつ、いくらと決めるのではなく、その時点での患者の体温や心拍数などで投薬の判断をすべきである。
そうしないと、結果的に財政赤字は減るどころか、かえって増えてしまうということは一九九七〜九八年に証明された通りである。 したがって柔軟かつ臨機応変な政策対応が必要であり、それは補正予算等も含めて考えるべきである。
実際に、八月末にはK首相が補正予算の編成を決断し、軌道修正は始まっているが、大変残念なことは、せっかく軌道修正しているにもかかわらず、その理由を総理が説明しようとしない点である。 なぜ財政出動が必要かは「バランスシート不況だから」の一言につきるのだが、それを国民と共有しようともせず、実に嫌々ながら補正を組んでいるというスタンスが見え見実際にK政権は、一方で補正予算と言いながら、もう一方では、二○○二年度の概算要求でマイナス成長のど真ん中にいながらいっそうの縮小均衡を目指す予算編成をやっており、実体経済とマインドの両方が冷え込むのを後押しするようなことをやっている。
また補正予算についても、三○兆円の枠内でやると、のんびりしたことを言っている。 これは過去四年間、毎年繰り返されてきたことで、景気失速が決定的になってから補正予算を打ち出しても、大きく開いた傷口はそう簡単に元に戻せるはずがなく、結局、財政赤字という治療費ばかりがかさんできた。
もっと早く決断して実行すれば、それだけ国民や市場を安心させ、その分支出(=財政赤字)も少なくてすむという機動的な発想が、どうしてこの国の政策担当者にはできないのか、残念な限りである。 これでは政府が正しく経済を理解して財政をやっているという印象を国民に与えることがでず、それでは経済界や株式市場が政権に対して持っている不信、不安を払拭することもできない。

これまでの日本経済は、ある意味で非常にラッキーだった。 というのは、アメリカがITバブルだったので、その尻尾につかまってアメリカへの輸出も伸びたし、アメリカに輸出しているアジアに部品を売って、それでずいぶん潤った部分もあったからである。
しかし今のアメリカ経済は相当疲弊している。 しかも随所でバランスシート不況に似た状況になってきている。
例えば、米国のCであるFRBは二○○一年の年初から三五○ベーシスポイントも金利を下げたのに、企業の資金需要は増えていない。 過去一二カ月の米国でも、この一○年間の日本と同様、個人よりも企業が大きく行動を変えたことが不況の原因となっているのである。
しかも米国の場合は、一九九五年頃から二○○○年まで個人の貯蓄率は大幅に減少し、そのことが堅調な消費となって経済を支えてきたが、二○○一年の夏から貯蓄率が反転し急上昇に転じている。 この傾向は、同年九月一一日の同時テロ以前から顕著であり、同時テロ以降はさらに加速すると思われる。
ということは、米国景気は企業だけでなく個人までバランスシートの修復に走り出しているということで、挟み撃ち状態になりかねないのである。 これは個人の行動は変わらず、企業だけが大きく行動を変えた過去一○年間の日本と大きく違う点である。
アメリカ経済がバブルの後遺症にはまったような状況になると、日本は以前のように米国への輸出という外需に期待できなくなるので、その分を景気対策に上乗せしないと、日本経済は底割れ状況になりかねない。 そういう意味では、今までアメリカが支えていた部分も補正予算で埋めなければならなくなるから、おそらく真水で五兆円から一○兆円ぐらいの補正予算が必要になってくるだろう。

補正予算は早くやるほうが最終的に財政赤字は少なくなる。 これを意地でもやらないとか、あるいは延々と先延ばしにしてしまうと景気はどんどん悪くなってくるし、株式市場のほうが先に崩壊してしまいかねない。
株式市場が崩壊してからあわてて補正予算をやろうとしても、その時には傷口は大きくなっているから、当初ならば五兆円ですんだものが、その時には一○兆円必要になるかもしれない。 実際に、K政権が財政再建を掲げて誕生してから同時テロが発生するまで、株価は大暴落を演じ、時価総額で一○○兆円以上の富が失われた。
政府はこの暴落を「痛み」として放置したが、その結果金融機関には一○兆円近くの損失が発生し、彼らが当初の予定通り不良債権の処理を進めることがまったく不可能になってしまった。 そして残りの九○兆円の損失も個人や企業のバランスシートを直撃し、景気の悪化と不良債権の増加を加速している。
ということは、最終的に必要な補正予算は政権発足時よりはるかに大きくなっていると言えるのである。 今のようなギリギリの局面でマーケットを無視することは、結果的に政権にとっても納税者にとっても大変高くついてしまうのである。
先日は内閣府で、市場で活動しているエコノミストを集めた会合(景気動向分析・検討チーム)が行われたが、全員とはいかなくても私を含めかなりの数のエコノミストが需要対策をおろそかにすべきではないという指摘をした。 海外だけでなく、国内でも「改革なくして景気回復なし」の一点張りには警告を発する声が出てきているのである。
ところが、最近ここで面白い現象が起きている。 というのは、マーケットのマの字も理解していない学者連中や、マーケットを受け入れず介入ばかり命令していた元大蔵官僚などが、最近盛んに「補正予算など打ったら、マーケットは大暴落する」という論陣を張っているのである。
彼らの論法はいくつかに分けられる。 まず一つに、再び財政出勤ということになったら、K政権が構造改革をあきらめたと捉えられ、そのことが構造改革にかけて株を買ってくれた人たちの失望を呼ぶというのがある。
しかし、サマーズ前財務長官が指摘した通り、財政のようなマクロ政策と構造改革はまったく次元の違う政策であり、この二つは代替物ではない。


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